1990年に『看護の日』が、1992年には「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定されました。医療における看護の重要性が改めて認識されはじめた頃です。また、患者さんや家族が、「看護師さんは、”患者”という側面だけでなく、生活や人生を送る一人の人間としての自分を理解し、支え、寄り添ってくれる存在」だということを、体験者の言葉として語り始めたときでもあります。
そのような背景の中で、当時、医療者個人への直接のお礼を控える文化がではじめたことも相まって、患者・家族の方々からの「何とかお礼の言葉を伝えたい、看護師さんの役に立つことで、恩返しをしたい」との声におされて、「サンクスナース」の活動が始まりました。個人の思いをひとつに集めることによって社会化する、新しい試みでもありました。発起人は故・日野原重明先生はじめ5人の委員にお願いをしました。
具体的には、多くの患者・家族の皆さまから届く感謝のメッセージを、私たちが仲介役となり看護師お一人おひとりにお届けする活動、看護師の皆さまの学びを支援する活動、コンサートなど、ありがとうの気持ちを表現する活動、などに取り組みました。このような活動が継続できましたのは、個人の皆さまからのご寄付、様々なアイデアでご協力くださった企業、有識者、文化人、メディアなど、たくさんのご支援があったからにほかなりません。
そこから、27年が経ちました。その間、委員の方々の高齢化などによる活動休止を経て、2018年、NPO法人キャンサーリボンズの中に主旨をそのままにして引き継ぎました。
2020年に生誕200年を迎えたナイチンゲールは、「看護は科学的思考を要する仕事」であり、同時に、「自分自身は決して感じたことのない他人の感情のただなかへ自己を投入する能力をこれほど必要とする仕事はほかにない」と語っていたということです。事実、私たちは、科学的思考と、どんな時も目の前の患者さんに寄り添おうとする思いや感性、誰かの力になりたいという志を併せ持つ多くの看護師さんに出会ってきました。私たちがそこで感じた看護の力、看護の本質は、どれだけ医療が高度化し専門化しても変わることはないでしょう。
私たち「サンクスナース」プロジェクトは、少しでも看護師の皆さまや看護界のお役に立てるよう、常に「サンクスナース」の原点を忘れずに、その時代その時のご意見やニーズをお聞きしながら、サポートにつながる活動に取り組んでまいります。
2020年7月